「入ろう」


慎也が玄関のノブに手をかける。


しかし、ドアは開かない。


「鍵がかかってるんだよ」


「じゃあ、窓からだ」


そう言うと家の横手に周り、窓を確認する。


そこもしっかりと施錠されていて開きそうにない。


すると慎也はなにを思ったのか、庭先の大ぶりな石を手に持ったのだ。


「ちょっと、なにする気!?」


横から声をかける佳奈を無視して、慎也は石を窓に投げつけたのだ。


佳奈は咄嗟に身を屈め、両手で耳を覆った。


当然大きな音が響くと思っていた。


ガラスは粉々に砕けて、大惨事になるだろうと。


しかし、石がぶつかっても窓は割れなかった。


ゴンッと鈍い音を発して、石が地面に転がる。