佳奈は慎也に右手を握られて深夜の街を歩いていた。


コンビニやファミレスの電気はついているけれど、中に人の気配はない。


「本当に誰もいないね」


「あぁ」


慎也は絶対に佳奈の手を離さないと決めていた。


この状況ではなにが起こってもおかしくは無いと思えたし、警察署で見た黒い化け物のこともある。


いつも以上に警戒してゆっくりと街を歩く。


「ちょっと、そのへんの家に入ってみるか」


「え?」


突然足を止めたかと思うと、躊躇なく見知らぬ人の民家へ歩いて行く慎也。


佳奈は手を引かれるがままにそれについて行った。


玄関に立った慎也は念のためにチャイムを鳴らした。


しかし中から誰かが出てくる気配はない。


2度、3度と続けて鳴らす。


普通これだけ鳴らせば目が覚めそうなものだけれど、やはり誰も出てこない。