首取り様1

その声は全員の耳に届いていたはずなのに、誰も返事をしなかった。


誰も、そのことについて説明ができないからだ。


「ついたぞ」


それからまだ無言で10分ほど歩いた頃、ようやく見慣れた警察署が見えてきた。


警察署の前にある街灯が周囲を照らし出し、電光掲示板がにぎやかに交通事故多発を知らせている。


その光景に佳奈はようやく安堵した。


日頃から見慣れている場所、見慣れている文言に緊張が溶けていく。


5人は足早に警察署のドアの前に立った。


しかし、自動ドアは開かない。


「夜中だもんな」


「だけど人はいるはずだろ?」


慎也と明宏がぶつぶつと呟いて、自動ドアの中を確認している。


電気は消されていて人の気配もない。


「もう1度、ここから電話してみようか」


佳奈がスマホを取り出そうとした、その時だった。