夢の中で触れた血はまだ温かくぬめぬめと慎也の手に絡みついてきた。


そのときの感触はまだリアルに残っている。


慎也は血に触れた右手でバッドを強く握りしめた。


いつどこから黒い化け物が襲ってきても怖くはなかった。


愛する佳奈の首を取られたのだ。


誰が相手だって返り討ちにしてやるつもりだった。


大股で街を歩く慎也はけれど怒りだけに支配されていたわけではなかった。


今夜の被害者が佳奈であってもそうでなくても、一番最初に行こうと思っていた場所がある。


それは昼間行った地蔵だった。


昼間に行っても目立ったヒントはなにもなかったが、今行けばまた違うかもしれないと考えていたのだ。


なにせ今の時間は相手の手の中にいると言ってもいい。


この空間でなら、なにか見つけ出すことができるかもしれない。


そんな期待を抱いていたのだ。


やがて慎也は黒い化け物に遭遇することもなく地蔵に到着していた。