夏休み中なのに集まれないなんてなー。


慎也から佳奈へ不服そうなメールが届いたのは夜ベッドに入った頃だった。


佳奈はスマホをねかしつけるように布団の中に入れて両手で操作した。


《佳奈:なんだかんだ忙しいもんねぇ私達》


高校2年生の佳奈たちには夏休みだからと言って遊んでばかりいる暇はない。


部活動に出たり、足りない単位を夏の間に補ったり、バイトをしたりと、大忙しだ。


おかげで佳奈と慎也はカップルだというのにまだどこにも出かけることができていなかった。


2人共家族で旅行に行くような楽しみもなく、ただ家で机にかいりついていたり、コンビニでレジ打ちをして過ごしている。


《慎也:高校2年生の夏休みがこんなんで終わって良いのか!?》


文字の後ろには怒っている顔のスタンプが添えられていて、佳奈は思わず笑ってしまった。


慎也が怒っている様子が安易に想像できたからだ。


青を赤くして両手に拳を作り、子供みたいにプリプリしている様子が目に浮かんでくる。


布団の中でクスクスと笑い声を立てたあと、佳奈はまたスマホを操作した。


暗い室内、スマホの明かりで照らし出される佳奈の表情はにこやかだ。


しかし、慎也の言う通り夏休み中にどこにも遊びに行けないのは佳奈としても辛い。


友人らもそれぞれ自分の用事が忙しくて、デートに行けないと嘆いていたことを思い出す。