「……枢木ってさ、」
「うん?」
観念したように、吉良くんはため息をつく。
静かな放課後の教室で、彼の仕草に目が奪われる。
「面倒だよね」
「……、うん?!」
どうして急に貶されたの……?!
突然戻ってきた塩対応吉良くんに、パンチを食らわされる。
面倒だよね、めんどうだよね、メンドウだよね……。
頭の中で吉良くんのイケボが再生されて、貶されているはずなのに、勝手にキュンとしちゃうのだから悲しい。
「ほんと面倒だし、適当だし、意味わかんないし、あざといし」
「……んん?!」
さすがに聞いていられなくなってきたよ……?
泣きそうになりながら、吉良くんのドライさを実感するけれど。
超ッッ絶嫌そうに彼は顔をしかめたと思えば。
そして異常に長いため息をついたかと思えば。
「だけど、まあ、……たぶん、枢木は可愛いとおもう」
まさかのデレ吉良くんが、降臨した。
「おれはよくわかんないけど、どうでもいいけど、枢木が合コン行くのは……なんか、気に食わない」



