吉良くんの弱愛なところ。



「えっと……ちょっと、職員室から走ってきた……から?」


もごもご。

歯切れのわるいわたしに、吉良くんは片眉を上げる。


「……また、廊下走ったの」

「えっ、うん! 吉良くんと一緒に逃げたときより、多分早く走れたよ?」

「ばか、またコケるじゃん」



お馴染みの台詞を言った吉良くんは、ふいっと明後日の方向を向いちゃった。


えっ、えっ、……え?

いや、わたしの気のせいだったらとても反省するけれど……。

なんか吉良くん、拗ねてない??


こんなに彼から話してくれることもあまりないから、ドギマギしちゃう。


しかも、教室にふたりきり。

こんな幸せな空間ほかにない。