い、いまのはなんだったのだろう……。
ドキドキとうるさい鼓動はイレギュラー。
咎めるような、わたしになにか訴えかけるような吉良くんの視線に、頭がいっぱいになる。
そのまま彼を見続けていると、いつのまにかわたしの前から去っていた山田くんが、彼の前に意気揚々と立ちはだかった。
そして山田くんが吉良くんのイヤホンをすぽっと抜き取る。
それに吉良くんが呆れたようになにか言って……という光景を眺めた。
山田くんは男の子版のわたしみたいな距離感の詰め方だと思う。
彼は吉良くんがひとりのときは、いつもこうやって声をかけていて。
うざったそうにあしらっている吉良くんは、たぶん山田くんのことは好きなんだと思う。
なんだかんだいまも、聴いていた音楽について話しているようだもの。
遠くのふたりを見てほっこり和んでいると、トンッと軽く肩を叩かれた。



