「ちがうちがーう……!本当に葛葉とは付き合ってないよ」
顔面蒼白の男の子たち。
わたしの言葉も、残念ながら真実だと思ってもらえない。
「名前呼び、妬けるぜ……っ」
山田くんが腕を手に当てて泣いているふりをしているのに、少し笑ってしまう。
葛葉って呼び慣れているけれど、名字で呼ぶ練習しとかないとなあ……。
彼らをなんとかなだめていると、ふと廊下側から視線を感じた。
ぱっとそちらを向く。
すると、イヤホンを耳に刺しながらいちごミルクのパックを飲んでいる吉良くんと目が合った。
バチ、と音がしそうなほど、しっかり視線が交じわる。
ドキッと心臓が音を立てて、勝手に顔が赤くなる。
射抜くような瞳がわたしを貫く。
遠くにいるのに、なんでわたしを見てたのっていますぐ聞きたい。
駆け寄りたい衝動を、なんとか抑える。
なにも出来ずにただ美麗な彼を見つめていると、何事もなかったかのように吉良くんはふっと目を逸らした。



