「なに見てんの」
嫌そうに顔をしかめる吉良くんは相変わらずだ。
ほんっとにツンデレだなあ、と頰を緩ませると、それに気づいた彼が拗ねたようにさっさと歩いて行ってしまう。
「あ、待ってよ、吉良くん!」
「待たない」
「速いってば……って、わあっ!」
わたしが小さく叫び声をあげると、瞬時に吉良くんは振り返った。
その表情は焦っていて、心配してくれたのがわかって、それがまた嬉しかった。
実はこけたように見せかけて、本当はこけてない。
だって、吉良くんったらすぐに置いていくんだもん。
ちゃんと引っかかってくれた彼ににこっと微笑むと、吉良くんはしかめっ面になってしまう。
怒らせちゃったかな、と思ったけれどそういうわけではなさそう。
わかりにくいようで、表情の些細なところを汲み取ると、感情がおおまかに感じ取れるようになった。



