ぎくり。
その質問をされる前にどうにかこうにか逃げるつもりだったのに、吉良くんはそうはさせてくれない。
「あっ、いやその……。わたし、こういう店来るの好きなんだよねっ」
ハンカチを持つわたしの片手は後ろ。
もうひとつの手は弁解するように、ブンブンと顔の前で横に振る。
それに、もっとふつうに言えばよかったものの、何度か噛んじゃったから怪しいのはバレバレ。
あからさまに挙動不審な動きを目の前で繰り広げるわたしの様子に、吉良くんは怪訝な表情を浮かべている。
ううっ……、やっぱりそうなるよね。
「ふーん……?」
納得していないのはその返事からでも伝わってくる。
でも、本当はきみにあげるためのハンカチを選んでました、だなんて言えるはずもなく。



