吉良くんの弱愛なところ。



若干どころかだいぶ引かれてしまっているけれど、いまはそんなこと関係ない。


慌てて思考を戻すと、この状況はかなりまずいことが判明する。

わたしの手には、彼にあげようとしているハンカチひとつ。


バレてしまったら、せっかくのお礼が台無しになってしまう。

どうせ、いらないって言うもん。


それじゃあ、わたしの作戦がだめになっちゃう……!



バッと手に持っているハンカチを後ろに隠す。

不自然なわたしの動作に吉良くんは少し気にしていたようだったけれど、気づかないでいてくれた。


話したいときは話せないのに、こういうときに出会ってしまうのは……幸か不幸かわからない。


ううっ……、どうしよう。

追い返すのも悲しいし、どうせならもっと話したい。

せっかく校外で会えたんだもの。


引き留めたいのに引き留められない、この逡巡。