吉良くんの弱愛なところ。





行も枠もまったく無視した字。


ほかの子はきちんと書いてるし、わたしのところだけ確かに浮いている。



でも、書き直しとかぜったい嫌。

せっかく吉良くんとたくさん話せていい思いで一日終われそうだったのに、最後が先生のお説教とか嫌すぎる。




どうしようかなあ、なんて、考える前に思いつくことはただひとつ。



わたし、走るのは得意なんだよね。






……ということで、枢木かなで、逃げます!







「じゃ、失礼しましたっ!」

「あ、おいっ!」



逃げ足は速いほう。

まあまあ先生を困らせるタイプの生徒だし、自覚だってある。



きっといつも職員室で、「枢木な……、あいつは手に負えん」「本当ですよ」なんていう会話が繰り広げられてるのだろう。


このままサーっと走って逃げようと思ったけれど、後ろで呆れている吉良くんを発見。





うーん、このまま置いていくのは気が引ける。

わたしのせいで、先生に捕まっちゃうかも。




それじゃあ、と。

枢木かなで、吉良くんと逃げます!