二十二歳、春。
私達は無事に大学を卒業した。

私は第一希望の化粧品メーカーの会社に就職することが出来たけれど、運悪く最初の勤務地が他県になってしまったの。

棗くんと冬子ちゃんが地元で就職が決まっていたから、あの時は本当に悔しかったわ。
二人ともてっきり東京で就職すると思っていたのに、棗くんから内定が決まったって連絡をもらった時は本当に驚いた。

まぁ、彼はすぐに不動産やら株に手を出して、一年足らずで退職しちゃうんだけど。

翌年の九月。
八月生まれの私と冬子ちゃんは二十三歳になっていて、十月になったら棗くんが、私達に追いつこうとしていた。

そう言えば冬子ちゃんって八月生まれなのになんで冬子ちゃんなんだろう。
まぁ、あの親だものね。そういうところもちょっと変わっているのかもしれない。
あら。まふゆちゃん、ごめんなさいね。気を悪くしたかしら。

その頃には棗くんはもう退職してた。
悠々自適に暮らしてた棗くんから、地元に帰ってきなよって電話をもらったの。

まだまだ残暑が残る蒸し暑い夜だった。
外し忘れた風鈴が窓枠の傍でちりん、ちりんって寂しそうに鳴ってたわね。

他県で就職して、まだまだ新人の私は貧乏暮らしだった。
それなりの仕送りは貰っていたけれど、新人だから就職先のお化粧品を買って試したり、勉強代は高くついた。

“大人だから”って身なりも気にしなくちゃいけなかったし、毎月かかる勉強代や決まって消える家賃や光熱費、食費だけでいっぱいいっぱいだった。

思い描いていた“大人”と違うなってどこかで感じていたけれど、考えないようにするしかなかった。

冬子ちゃんへの想いは一切会えなかった四年間で限界を迎えていて、その限界が“想いが尽きる”限界だったら良かったのかもしれないわね。

私の“限界”は、冬子ちゃんへの想いを余計にこじらせていたわ。
会いたくて堪らなかった。
四年間、自由にさせてあげたんだからもういいでしょ。
そろそろご褒美があったってバチは当たらないでしょ。