カバンを手渡すと、執事さんが一瞬不思議そうな顔をしたのは、見なかったことにしよう。


それからは、ひたすら家の中の案内を受けた。


「ここは、澄野さんのお部屋になります」


家では、自分の部屋なんてなかった私。


この家では、それがある。


「では、メイド服に着替えていただきます」


執事さんは、私にメイド服を渡すと部屋から出る。


それを確認して、メイド服に袖を通す。


パフスリーブの袖に、ふんわりスカート。


上品なデザインで、私好みだった。


ドアを開けると、執事さんが待っていて、少しだけまた家の中を案内してもらう。


「ここが、澄野さんが仕えていただく方のお部屋になります。坊ちゃん、新しいメイドの方です」


そう言うと、中から低く


「入れ」


と、聞こえてきた。