なだめられて多少悔しくも思ったが、キレる気力もない。


「冬夜、本当に里奈ちゃんがそう言ったのか?」


翔の瞳が真剣なものへと変わる。


「ああ」


昨日のことは出来れば思い出したくない。



全部、夢だったらいいのに何度考えたことか。


反芻する記憶を振り払うように一日を過ごすが、そんなの効果ない。


考えないようにするほど、思い出される記憶に一日中振り回された。


家に帰ると、いつものように母の部屋に呼ばれる。


いつも言われる言葉、今日で最後になるだろう。


「母さん、入ります」


「いいわよ」


入れば、俺の部屋と真逆な装飾が目に入る。


「......なんですか」


「早く、別れなさい」


「......別れました」


「あら、そうなの?」