象牙色の壁に、赤褐色の柵。

おどろおどろしい夜の雰囲気とは違い、昼間は古びた外観が侘しく感じる。


なんで……?


その疑問を声に出したつもりはなかったけど、由良くんは呼応した。


「なに?」

「てっきり私の家に帰るのかと思ってて……」

「あーうん、だな」


着いたのは、由良くんのアパートだった。


家に送ってくれるのかなと思っていた私は呆気に取られる。


そして、どういうわけか由良くんは他人事のよう。



「じゃあどうして?」


先陣を切って階段を上がる由良くんの背中に話しかけた。


「どうしてだろうな。俺もわからねぇ」

「なにそれ」

「気づいたら……っ、いや、なんでもない」


由良くんはハッとしたように言葉を切った。