前に2人で街中を歩いていたとき、雑誌の撮影か何かでモデルさんを見かけたことがある。


小さな顔に長い手足、陶器のような肌は同じ次元の人とは思えないほど美しかった。


雑誌やSNSで見るより本物の輝きは凄まじく、「さすがモデルさん」と2人して語彙力のない感想を漏らしたのを覚えている。


あのときの反応と比べれば天と地の差。

……今の方が断然、興奮している。



ほとんどが遠巻きに見る中、果敢にも何人かがその人物に声をかけていた。


背景にバイクを背負い、ヘルメットを取っても一糸乱れぬセンターパートの黒髪、漂う色気は高校生の目に憧憬を映し出す。


最上級の褒め言葉を与えていい容姿に反して、その瞳は強い拒否反応を示す──由良くん。



私の名前が聞こえたのか、由良くんが群衆の中から私を見つけた。