ヨルガオ-午前0時の逃避行-


「由良くん、ありがとう」


校門の前で下ろしてもらい、お礼を言う。


私の家に行って、そのまま学校まで由良くんが送ってくれた。


バイクの送迎は、禁止されているわけではないけど、ちょっぴり背伸びしているみたいでドキドキした。

車で送ってもらうよりも悪いことをしている気分。



「終わるの何時?」

「6時間目が終わるのが3時半で……そのあと、ホームルームとかして……」


と頭の中で予定を確認しながら帰りの時間を計算する。


今週は掃除当番じゃないし、委員の仕事もない。

部の活動もないから、ホームルームが終われば即帰宅。


ひとつひとつ丁寧に説明しようとしたけど。


途中で由良くんが止めるように「わかった」と言葉を挟んだ。


「終わったら連絡しろ。迎えにくる」

「え……」

「早く行け」


そうだった。急がないと!


駆け足で校舎に向かった。


遅刻しそうな今、考えている暇がなくて。


『迎えにくる』


その言葉がすとんと頭の中に落ちてきたのは、1時間目の国語の授業中だった。