「うん」
「そうか、高校生か……」
やっぱり由良くんは気づいてなかったみたい。
面食らっている。
「制服とかどうすんの?」
「お母さんが仕事に行く時間を見計らって家に戻って、準備してから行こうかな」
ここでサボるという選択肢が出ないところが私の半生を物語っている。
真面目な人生。
たとえつまらなくても、誇れることの1つなら貫き通したい。
すると、由良くんがおもむろに立ち上がってクローゼットを開けた。
見ちゃいけないと思って咄嗟に目を逸らしたけど、ちらっと映ったのは隙間を見せて掛けられた数着のジャケットやパーカー。
隠れたところに物がぎっしり詰まっているのかと思えば、クローゼットの中まで必要最低限。
由良くんは本当に物を持たない人らしい。
「母親が仕事に行くの何時?」
「えっと……いつも8時前には出てる」
「わかった。俺も一緒に行く」



