パジャマ姿であることも深夜であることも忘れ、家を飛び出して走る。



気持ち悪い気持ち悪い。
消えろ消えろ消えろ。



溢れる涙を拭うこともせず、唇をごしごし擦る。


キスされた事実も。残る感触も。

早く消えて。



あてもなく走ったつもりでも、気がつけばコンビニにたどり着いていた。


夜に妖しく光るコンビニの明かりを見て、足の力が抜ける。

駐車場にへたり込んだ。


「ハァ……ハァ……っ」


震えるような息が荒く漏れる。

その間もとめどなく涙が流れて……。


やがて息が嗚咽に変わっていく。


「うぅ……っ」



苦しい。

もう、やだ……っ。


誰か……。



助けて。



────っ。


顔を押えていた手があやつり人形のように力を失った、そのとき。

落ちた手の甲が硬い何かに当たった。