目に映るのは、視界いっぱいに広がる藤さんの顔。 あまりに近くて焦点が定まらない。 口に移るほろ苦い……お酒の味。 その何かが、唇だと気づいた。 「……っ、いや!」 思いっきり押し返す。 私の非力ではなんとかよろけさせる程度だった。 でも、咄嗟に掴んだグラス。 水入りのそれを投げつける。 「うわっ、つめて」 怯んだ隙を狙って、私はその場から逃げた。