ヨルガオ-午前0時の逃避行-


家に着いたのは日付がかわる直前。


12時という約束通りの時間に送り届けてくれる由良くんは、かなり律儀な性格なのかもしれない。



「暗いな」


電気の点いていない家を見ながら由良くんが呟いた。

私はヘルメットを返しながら答える。


「うん。まだ帰ってないみたい」

「……」



深夜、誰もいない家に帰るのは怖い。


玄関のドアを開けたら真っ暗。

リビングのドアを開けても真っ暗。


家に帰った瞬間、強盗と出くわしてしまうかもしれない。


真っ暗な部屋に、茫然と幽霊が立っているかもしれない。


だけど、

それ以上に怖いのが、孤独。



家は残像。

物や匂い、記憶を通して人の温もりを残す。


だからこそ、実体がないとわかった途端に孤独が蝕んでいく。


要するに、普段は人の気配がある場所だからこそ、1人になったとき強い孤独を感じる。


……でも。