あの頃の私は、闇にすべての感覚を奪われていた。


自分がどこにいるのかわからなくて、どこへ向かって歩いていけばいいのかもわからない。


磁石もない、標識もない。

夜なら一番星を目指すのに、見上げたって何も見えない。



そんなとき、一縷の光が差した。


瞬きの閃光とは違って、淡く淑やかな灯火。

不確かで曖昧だけど、「こっちにおいで」と照らし続けてくれる。



道が見えた。

出口に向かって歩き出す。


未来は見えないけれど、光があるかぎり道は続く。



私にとって由良くんは、そういう存在だ。