杏樹さんとの出会い、空中楼閣が誕生した経緯、総長になった理由、昇龍との因縁。

そして、杏樹さんの最期。


すべてを話し終えた由良くんは、やっぱり笑った。


だけどその笑みに含まれるのは、温柔とは無縁の、哀傷。



「由良くんが、柊哉くんたちと会いたくないのは……杏樹さんを思い出すから?」

「……」


由良くんは私から顔を背けた。


「彼女が必要ないのも、大切な人を作りたくないから?」

「……」


顔を背けたまま。


「私に、『関係ない』って言ったのも……踏み込んでほしくなかったから?」

「……言い当てんなよ」


手で目元を覆う。

まるで、泣いているところを見せたくない、みたいに。


涙は流していないけど、小刻みに肩を震わせている。