行楽シーズン。多くの人が賑わうビーチから少し離れた岩場で、杏樹はいつもの明るさを崩さずに話した。

幼いときに両親を亡くし、それから親戚の家をたらい回しにされていることを。


「今年息子が中3で受験生になるから、って今の家に回されたけどさ……結局、俺が邪魔だから適当に理由つけてるだけだよね」


その笑顔が、俺は少しだけ怖かった。


「しかも、今の家がこれまた最悪でさー。超仲良いから居場所がないんだよ」


杏樹がなぜ距離の詰め方が上手いのか、なんとなくわかった気がした。



それからだ、俺と杏樹が仲良くなったのは。


海に行ったり夜遅くまでゲームして遊んだり。

公園で花火をしていて、セントバーナードのようなおまわりさんに追いかけられたこともあった。