「ごめんなさいっ……、私の、せいで……」

「いいから黙ってろ」


バイクを下りて、手首に括られた紐を解こうとする由良くん。

そのときに香ったシトラスの匂いが、下まぶたに溜めていた私の涙を落とした。


滲む視界。映ったのは、


「てめぇ!」


鉄パイプを振りかざす男。


「由良くんっ!」

「──っ!」


すんでのところで振り向いた由良くんが鉄パイプを受け止める。


その細身の腕のどこにそんな力があるのだろう……。


鉄パイプごと男を投げ飛ばした。



気づけば、手首の紐が緩んでいた。

手に血が戻ってきて、もう自力で外せる。


立ち上がって……。


私に背中を向ける由良くんの前には、7人の男が立ちはだかっていた。