最後まで由良くんは壁を作ったままだった。 結局、わかったのは名前と年齢だけ。 それ以外のことは何も知らない。 ……でもね。 「母親の彼氏、もういねぇの?」 「うん。だいたい12時前には帰るから」 由良くんは優しい人だと思う。 私の家の事情なんてどうでもいいことなのに、こうして気にかけてくれる。 「そっか。じゃあな」 何か気の利いた言葉をかけてくれるわけでも、笑顔を見せて安心させてくれるわけでもない。 だけど、後ろ姿を見送りながら私の心に愛着が残る。