家までの距離はそこまでなく、比較的近い。 だから、できるだけ長く一緒にいたくて、気付かれないように歩くペースを遅くした。 「…久しぶりだな。こうやって一緒に帰るの」 だって唯織が、東雲さんと一緒にいるから。 「話すのも、久しぶりだよな」 それも、唯織が東雲さんと一緒にいるから。 ……全部全部、東雲さんがいるからでしょ。 途端に渦巻きだす黒い感情に慌てて蓋をする。 「そうだね。全部久しぶりだ」 明るい声音で言うと、唯織がわずかに頬を緩めた。