全てが整ったのはもうお昼近くだった。ラヴェルの荷物は見送りのロガールさんが背負い、白馬の背に乗せられたラヴェルの後をあたしとアイガーが追う。

 飛行船は変わらずちゃんと其処に有った。出てきた時と同じように、ツパイは自分のカプセルでぐっすり眠りについているのだろう。

「ロガールさん、お世話になりました」

 自分の荷を船内に戻し、ラヴェルの荷物を受け取って、ロガールさんに深くお礼のお辞儀をした。ラヴェルに手を貸して馬から降ろしたロガールさんは、はにかむように笑顔で応えてくれた。

「旅が終わったらまたおいで。たっぷり新鮮ミルクとチーズをご馳走するよ」
「はい、是非! ゴロゴロシチューもお願いしますね!」
「ははっ、あんなので良ければ幾らでもだ。君のスープも美味しかったよ。……じゃあね、アイガー、楽しくやるんだぞ」

 そうしてあたしの横に佇むアイガーの前に進み、腰を屈め頭を撫でた。アイガー……本当に一緒に行くのね?

「アイガーの主人はもう決まったからね」

 と、ラヴェルは心の声を聞いたように、隣の様子にあっけに取られるあたしへ呟いた。