ロガールさんの戻る頃にはスープは煮えた。無断で野菜を使ったことも意に介されず、ホッとしたあたしは隣室のあいつを呼ぶ。何となく弱々しい足取りだけど、ラヴェルは自力で食卓に着いた。

 皆が朝食を始める少し前に、アイガーが扉を押し開き帰ってきた。どうやら一晩中ツパイについていたらしい。あの会話をしてからツパイとは何も話せなかったので、あたしの中には罪悪感が渦巻いていた。次に目覚めた時にはちゃんと謝ろう。そう反省して食事を進めた。

「ラヴェル……もう発つのか?」
「え?」

 おかわりの冷たいミルクを頂きながら、その会話に驚く。発つって……そんな調子なのに、もう!?

「休むなら飛行船でも出来るからね。そろそろタラとも合流出来るだろうし……彼女は北路を使っている筈だから、進んだ方が早いんだ」

 ほぼあたしへ顔を向けて説明したラヴェルは、それからミルクを飲み干し、更なる問い掛けをするロガールさんを見上げた。

「『タラ』とは?」
「ハイデンベルグの一族です」
「──【彩りの民】か」

 ハイデンベルグ? 彩り??

 二人のやり取りに、あたしの脳内にはハテナが駆け巡る。頷き肯定したラヴェルにロガールさんは、

「それだけ揃っていれば、よりどりみどりじゃないか」

 ニヤリと皮肉のように笑い一瞥(いちべつ)した。