それからのツパイとあたしは、まるで声を失ったかのように喋らなかった。

 ツパイは今晩眠りにつくまでの時間を、看病しながら過ごすとラヴェルの部屋に立てこもり、意気消沈して首の垂れたあたしは、それを見かねたロガールさんに連れられて、放牧地の柔らかい草の上に座り込んだ。目の前で白い子山羊が親に甘えるように飛び跳ねている。そんな元気な姿が、真逆とも云えるラヴェルの突然の異変を、尚更痛烈な物に思わせる。ううん、違う。突然じゃない……テイルさんの許を旅立ってからのあいつの眠そうな顔──あれもきっと『事後』の疲労だったんだ。

「大丈夫かい? ユスリハ」

 アイガーと一通り家畜達の様子を見て回ったロガールさんは、少しためらいがちにあたしに声を掛け、隣に腰を降ろした。逆隣には慰めるように伏せるアイガー。

「はい……すみません」

 膝を抱えて出来るだけ小さく丸まったあたしは、多分迷子の子供みたいだっただろう。