「ええ。テイルさんのご子息を(さら)った化け物と同一です」
「あ……」

 息子さんを化け物に襲われた彼女の許へ、ラヴェルが立ち寄ったのは偶然じゃなかった。そう確信したあたしは尚更意味が分からなくなった。同じくあの化け物に襲われた肉親を持つあたし。でもアイガーがご主人を失ったのは、テイルさんと同じくきっと最近のことだ……この時間の隔たりは一体何?

「ツパイ……あたしの両親もあの化け物に襲われたの、知っているんでしょ? あいつとその話はまだ出来ていないのだけど、今回のこととも関係しているの? あいつと遠い親戚だって言ったロガールさんは、あたしのラストネームを言い当てた。うちの家系はあいつの家系と何か繋がりがあるの? ねぇ……教えて! 何がどうなってるの!!」

 あたしはテーブルの上に置いた両手をきつく握り締めた。気付けば質問の最後は悲痛な叫びになっていて、ツパイは困ったように唇を噛んでいた。

「お話したいのはやまやまですが……今は機が熟していません」
「ツパイ……熟すって──」

 拳を開きテーブルの端を掴む。あたしは前のめりになって追究を試みたけれど、途中で割り込んだツパイの涙声はそれを許さなかった。

「これ以上ラヴェルを哀しませたくないのです……ですから、もう少し……もう少し辛抱いただけませんか?」

 ツパイ……?

 ラヴェルの抱える『哀しみ』というものが、恐ろしく大きく感じられて、あたしはそれ以上言葉を繋げなかった──。