あたしが入浴を済ませ、その前に交わした会話を『なかったこと』にしたいように、身を縮込ませてコソコソと出てきた頃には、男二人は眠そうな顔をして、リビングの隣の寝室を整えていた。

 テーブルの上にはお酒らしき翠色の瓶。ロガールさんの鼻の頭もほんのり色づいているから、『あたし(オニ)』の居ぬ間に楽しんだのだろう。何よ~国境は越えたけれど、あたしの国の十八歳はもう立派な成人なんだから!

「ユーシィ、支度はもう出来た? 君には特等室を用意したから、どうぞ今夜はそちらでおやすみ」

 あっそ。あんたとロガールさんの間で眠れと言われず良かったわ。

 いつも通りのラヴェルが、ちっとも呑んだ素振りも見せずに、あたしの背後の梯子を示した。ふーん、屋根裏部屋ね。これならあんたが寝込みを襲おうと上がってきても、登る音で気付けるかしら。

「それじゃあ、おやすみ!」

 あたしはぶっきら棒に言い放って、クルりと背を向けガンガンと梯子をよじ登っていった。きっと二人はあたしを酒の(さかな)に愉しんだのだろうし、ラヴェルはロガールさんにあれ以上あたしに何も話さないよう、仕込みを済ませたに違いない。あたしはそんな自分勝手な想像から、頭に血が昇ってしばらく眠ることが出来なかった。



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