いいかげん狭いスペースに閉じ籠もることに飽き飽きしたあたしは、仕方なくリビングへ戻り、いつものチェストで外の景色を瞳に映した。

 北に向かうにつれ、陸の風景も変わってゆく。もっと進めば黄金(こがね)色の平原は徐々に灰色になり、ごつごつとした峰々に変わるだろう。ラヴェルの次の目的地はその山なのか、山の向こうなのか。……その内……この謎だらけの生活にも慣れるのだろうか……それは……慣れではなくて諦めなの?

 そんな内容のない一日が翌日もその次の日もほぼ続いたが、ラヴェルのお昼寝タイムは初日の三割増し、三日目は更にその三割増し、それでも眠そうにぼぅっとしているのは寝過ぎなのか眠れていないのか、妙に倦怠感のありそうな猫背の後ろ姿を見詰めながら、あたしは変わらず声を掛けなかった。

 が、無言の生活もそろそろ疲れを見せ始めた暮れなずむ夕方、顔でも洗ってきたのか、洗面所から瞳パッチリで登場したラヴェルは、いつもの調子であたしの背後にピッタリ寄り添い、

「ごめんね、ユーシィ。ずっと淋しかった?」
「なぁにぃ~!? きゃあっ!!」

 怒髪天で振り向こうとしたあたしの首に腕を絡め、いきなり頬に頬をすり寄せてきた!?

「あ、あんたねえ!」

 慌てて振りほどき、グーに握った拳をその頬めがけて繰り出す。も、あっけなくかわされ……

「次の目的地に到着だよ。自分の着陸技術、手取り足取り教えるから、コクピットへ来ない?」
「少なくとも、手も足も取らないでよね……」

 茶目っ気たっぷりにウィンクを投げたラヴェルの笑顔へガンを飛ばし、不本意ながらも内心ワクワクしながら後へ続いた。



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