空へ戻って三日、その間あたし達は挨拶以外一言も話さない旅路が続いた。

 あれから離陸作業を終えたラヴェルは、数時間コクピットから出てこなかった。自動操縦に任せられる筈なのに、籠城するとはよっぽどあたしに問われるのが嫌なのだな、と半分拗ね気味に思ったけれど、エンジンルームの点検を終えたあたしと鉢合わせをしたあいつは、大きな欠伸と背伸びをしていたから、どうやら単に昼寝をしていただけだったみたいだ。

 それから手持ち無沙汰なあたしはランチを作り、いつの間にか当たり前のように二人分をテーブルに供していた。この一ヶ月間一人分の食事しか作らなかった筈なのに……。亡き祖父と自分の分──十年来の癖が出たお陰で、こんな忌々(いまいま)しい奴を喜ばせてしまっている自分が心から恨めしく思われた。

 ラヴェルが「ごちそう様でした」の言葉と共に率先して片付け出したので、あたしは入れ替わるように操船室へと赴いた。初日に教えてもらった際に貸してくれたテキストを覗きながら、各計器と照合する。昨日の記憶を頼りにツパイの教授も復習した。ラヴェルの離着陸技術は喉から手が出るほど学びたい最重要事項だったけれど、今のあたしはあいつの声を聞くだけでも苛立ってしまいそうだった。