──十年前。八歳のあたし。

 ラヴェルは……十一歳か。明らかにウエストとは一致しない。髪は戻せば同じ色だとしても、瞳の色までは変えられない。義眼の片目は可能かも知れないけど、もう片方は説明がつかない。第一あいつだって、まだ子供だったもの。

 あ! 待って……あの時、もしかしてウエストと一緒に居たのだとか? あたしが気付かなかっただけなのかも。そうしたら、あいつはウエストを知っているのかも知れない! だから……だからあたしをウエストが名付けてくれた「ユーシィ」と呼ぶの!?

「訊いたら、教えてくれるだろうか……」

 ポツリと呟いた疑問がカプセル内に響いた。今まで散々はぐらかされてきたのだ。あちらから親切に説明してくれる訳もないし、たとえ問い(ただ)してもまた眠らされるに違いなかった。

 ウエスト……会いたい、よ……。

 ゴロンとラヴェルのカプセルとは逆の方向へ寝返りを打つ。ああ、でも……このままラヴェルと居たらウエストに辿り着けるのではないだろうか? もしあたしが襲われる『脅威』があの黒い化け物ならば、またウエストが助けに来てくれるのかも知れない。ううん、ラヴェルは化け物を倒せるウエストの許へ、あたしを連れていってくれようとしているのかも知れない! でも……だったら、どうしてキスなんてするのよっ! あたしはウエストに憧れているのに!!

「あああぁ~……」

 無気力な溜息が深く吐き出されて、あたしは瞳を閉じた。二人が戻ってきたことも気付かぬ内に、いつの間にか眠りの海へ身を投じていた。



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