「──ラヴェル、考えが変わったのですか?」

 どうも説教っぽくはないけれど、何とか会話は聞こえそうだ。

「考え? どうして??」

 少し緊張の張り詰めたようなツパイの質問と、相変わらず飄々(ひょうひょう)としたラヴェルの疑問。

「ユスリハを連れてきたからです。紡ぎたいと……思えるようになったのではないかと」

 紡ぎたい??

「残念ながら、自分の考えは変わらないよ、ツパ。ユーシィを連れてきたのは、それが一番安全だからさ」

 一体どういう話なんだろう……一番安全ってどういうこと?

 それからツパイは深い溜息をつくように、その小さな肩を大きく上げて下げた。

「もう何度も話しましたが、貴方が全てを背負い込む必要などないのです。どうしてこれまでの慣習を変えようとするのですか」
「変えなかったら、また同じことが起こる。自分も何度答えたかな? ツパだって分かっているくせに」

 慣習、同じこと……そう答えたラヴェルの語気が少し強くなった気がした。

「了解しました。とりあえず貴方の考えがまだ(かたく)なであることだけは。ところで……ユスリハは不時着したと言いましたが、実際は違いますね? 貴方がそんな失敗をするとは思えませんから」
「ツパは何でもお見通しで本当に困るよ……」

 ツパイに続けて肩を上下させたラヴェルの声は、苦笑いといった様子だった。失敗していないって……あれは事故ではなかったというの??

「自分には『記憶』があるからね。でも立ち寄る理由が自分にはなかった。ユーシィは自分のことを知らないし……出逢うきっかけが必要だった」

 何を……言っているの?

 あたしはあいつの話す言葉一つ一つが分からなくなった。出逢うきっかけって……どうしてあいつはあたしと知り合う必要があったの!?