結局あたしの知りたい情報は本日も一切収穫なしとなった。あれから四人でお茶をして、三人は元の作業場へ、あたしもツパイの手伝いをしようとその後をつけ回したのだけれど、やっぱり何処か諦めきれていなかったのかも知れない。もちろんあの「今はどれもお答え出来ません」はくつがえることはなく、それでも合間合間、遠慮がちに問い掛けた飛行船自動操縦の仕組みについては、快く説明をしてくれた。

 ランチとディナーは楽しい時を過ごせたけれど、何故だかテイルさんは一切息子さんの話を口にすることはなかった。その中間にやって来たお約束の焼き立てクッキーと、子供達とのお喋りも淀みなく弾んで、明朝発つのだと告白したラヴェルの足元には、残念そうなふくれっ面が集まった。飛行船に乗せてほしいとすがる沢山の手に、「また立ち寄った時にね」とあいつは先の約束を交わしたけど……まぁあたしを我が家へ送り届ける為に、来た道、ならぬ空を帰る時なのだろう。

 見違えた立派なお宅から、すっかりどころか普通以上の元気さを取り戻したテイルさんに見送られ、この夜はツパイも交えて三人と一匹での帰路となった。お陰で昨夜のような奇襲に構える必要もなく、あたしは疲れた身体に夜の涼しさを心地良く感じながら、目の前を歩くラヴェルにふと思い出したことを問い掛けた。

「ねぇ、そう言えば、何でピータンは戻ってきたのよ?」

 振り返る、毛先が闇に溶けた薄紫色の髪。

「ああ……だって、レディの独り歩きは危ないでしょ?」

 昨日は独りでおつかいにやらせたじゃないか。第一お迎えがピータンじゃ、あたしは恐怖するばかりよ。

「あ……」

 が、途端思いついた理由に、声が零れてしまった。

 こいつ、昨夜の質問に(おのの)いて、もしや町の誰かからまた情報を得るのでは? と、あたしを見張らせていたんじゃないだろうか?

「どうかした? ユーシィ」

 ……と言っても、ピータンは喋れないのだから、何もラヴェルには伝えられないか。

「べっつに~」

 両手を後頭部に回して、立ち止まった横を通り過ぎる。こいつの秘密、絶対暴き出してやる!

 そう意気込んだあたしにそのチャンスは、意外にも早くやって来た──。