「それより、あたしに何か用?」

 男の子にも女の子にも一通り愛嬌を振り撒き撫でられたピータンは、少々不本意な様子であたしの肩に戻ってきたので、興奮冷めやらぬ子供達に問い掛けてみる。

「あーそうそう! あのさっ、昨日お姉ちゃん達、何をどうやってテイルおばさんを元気にしたの!? 今日もお姉ちゃんの仲間がおばさん家に行ったよね? ちょっと覗いてみたんだけど、おばさんすっごく元気になってて! 何か魔法でも使ったの??」
「え……?」

 そりゃあ昨日吉報を聞いたテイルさんは随分血色を取り戻したけれど……この子達の言う元気さはそれを通り越しているような?

「そ、んなに、元気になってた? よ、良かったー! これからあたしもテイルさんの所へ合流しようと思っているの。この目で確かめてくるわね」

 どうやって彼女が元気になったかなんて、あたしに言える筈がなかった。嘘で固められた過去と未来。もう今となっては誰も疑わず口にせず、信じていてくれることを願うしかない。

「うん! お家も綺麗になって、おばさんは元気に庭仕事してた! 僕達の母さんも喜んで、あとでクッキー焼いて持っていくって言ってたから楽しみにしてて!!」

 「ありがとう」とカチカチの笑顔で頷くのを認めた子供達は、嬉しそうに「またね」と麦穂の波へ飛び込んでいった。

「これで、いいのかな……」

 ぽそりと呟いて再び歩き出す。意外なことにピータンは、濡れた鼻先で慰めるように、あたしの首筋をスッと撫でた。



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