「ユーシィ、頭の中がグルグルしてそうだね。ツパは子供みたいに見えるけれど、実際は三十二歳なんだ」
「……へ? え? ええっ!? う、嘘! ──んん!!」

 いきなりの種明かしに、パンを喉に詰まらせそうになった。さ、三十二歳!?

「僕は三歳以降、三日寝て一日起きるというルーティーンを繰り返しているのです。ですから実質三十二年生きていても、起きている時間はその四分の一。計算上、身体は三年+七年強しか成長していないという訳です。頭脳と精神の方はそれに限りませんが」

 いやだって……「寝る子は育つ」と云うじゃないの。眠っている間は止まっているの!? ああ、それよりも、ってことは──

「じゃ、じゃあツパイは、ずっと其処で眠っていたの?? 不時着した時もずっと!?」
「不時着……? ──ラヴェル?」

 あたしに向けられていた上半分髪の毛の顔が、咄嗟にラヴェルの方へ振り返った。さすがにバツの悪そうな表情をしたあいつは、

「二日前にね……ちょっと操縦ミスっちゃって、ユーシィの畑に……」
「ラヴェル、今夜付き合いなさい。少し説教でも唱えてあげます」

 後ろ髪を掻き回すラヴェルは、まるで親に(いさ)められる悪ガキのようだった。ピータンでも危うかったあたしの貞操、ツパイなら守ってくれそうだな。