あれは夢だったのだろうか? 急に眠りに落ちて、抱き上げられて……でもベッド(ココ)に自力で入った覚えはない。だからやっぱり運ばれたんだ。

 あたしは薄暗いカプセルの中で、ぼんやり天井のシュートボタンを見詰めていた。あいつはあのお茶に眠り薬でも忍ばせたんだろうか? そうでもなければあんな突然に……それはあれ以上、あの話を続けたくなかったから? レイさんはきっともう亡くなっていて、それでもラヴェルはテイルさんに生きる希望を与えたこと……たとえそれが嘘であっても──。

 ……行きたくないな、テイルさんの所。

 あたしは寝返りを打つように、横を向いて丸くなった。今日もあの家に出向いて、食事の用意と身の回りの片付け作業の残りをこなすことになっている。きっとテイルさんの笑顔を見てしまったら……自分の中で葛藤する──嘘の幸せと真実の不幸が。でも言えないんだろう、あたしでさえも。

 ──ゴトン。

 その時、天井に向いているあたしの左耳に物音が降りてきた。ラヴェルがあたしの上の寝台から、何か荷物でも物色しているのだろうか。

 いい加減起き出そうかとあたしも足先の扉を開いて、ずるずると身体を押し出してみたけれど、その先にはそんなラヴェルの姿は見つからなかった。下半身がリビングに移ったところで、腰を折り曲げ頭から身体を続ける。カプセルの端に腰掛けた、ところ……?