「安心して。タラは自分の彼女なんかじゃないから」

 何とか間一髪で、跳びかかるピータンからあたしを救い出したラヴェルは、

「その『安心して』っていうのは心外だわね。あたしに心配する筋合いなんてないでしょ」

 戻った飛行船のテーブルの向こう側で、不機嫌顔のあたしに満面の笑みを見せていた。

「相変わらずつれないな~ユーシィ」
「あのねぇっ──」

 こんな喧嘩腰では話が進まないのは分かってるんだけど……。

「タラはそうだな……言ってみれば『姉さん』みたいな存在かな」
「姉さん?」

 ということは、年上なんだ。

 テーブルに置かれたアロマランプは甘い香りを漂わせて、その仄かな灯りに照らされたあいつの手元が、あたしのカップにおかわりのハーブティーを注いでいた。

「小さい頃からの知り合いだからね。でも結構歳は離れているし、タラにとっても自分は弟みたいなものなんじゃないかな。だからどうもね、お互い相手の格好には無頓着というか」

 いえ、血が繋がっていないなら、少しくらいは意識しなさいよ。というか、そう言えばこいつは幾つなんだ?

「あんたって歳幾つ?」
「二十一歳。タラは二十七」

 あれ……ラヴェルはあたしともっと近いのかと思ってた。三つも違うのか。