「とりあえずユーシィの絶品スープとパンでいいかな? 夕食はリゾットでも作るよ。急に固形物を取ったら胃が驚きそうだしね」
「あんた、相変わらず至れり尽くせり、ね」
「んん?」

 目を丸くするラヴェルを置き去りにして、流しの上の戸棚から、埃の被った皿を取り出す。桶に汲まれた水を拝借して洗い、拭き上げて、香ばしい香りのする温かなパンをその上に乗せた。

 テイルさんには既に煮崩れたスープと柔らかめのパン、こちらはベーコンエッグを挟んだフランスパンにカフェオレを頂き、遅ればせの昼食を楽しんだ。いつ戻るとも知れないレイさんを思えば、余り会話は弾まなかったけれど、テイルさんは喜びの微笑みを口角に刻んだまま、ゆっくりゆっくり食事を噛み締め、特にスープは大好評だった。

 それからラヴェルはリビングのソファをまんべんなく叩き、汚れを払って彼女を休ませた。彼がキッチンを片付けリゾットを作る間、あたしは寝室の掃除を任され、夕食の頃には何とか全てが整った。再びの食事と片付け、お礼の言葉が絶えないテイルさんを何とか寝かしつけ、陽の落ちた麦畑を二人戻る途中、

「ああ……そう言えば、おばさんに貸した服、あれ、ユーシィのだよね? やっぱりタラのはダメだったか~」

 そうだっ、それ! その話!!

「そ、そのタラさんって何者なのよっ! あんたの彼女?? あ、あ、あの衣装、一体何な訳っ!?」

 あたしは掴みかかりそうな勢いで、隣のラヴェルにまくしたてたけれど──。

「あ、れ……? もしかして、ユーシィ、妬いてくれてる?」
「あぁ!?」

 昨夜のように腰に手が回されて、思いっ切り抱き締められた。って……何でこうなるのよっ!!

「ち、ちがーうっ!! 放してったら、契約解消~~~!!」

 と、叫んだ途端解放されたけれど、あたしの目の前には、もうおっかない顔をしたピータンが迫っていた──。