「……お姉ちゃん?」

 つい目の前の子供達を忘れて、あたしはグルグルと行き先の見えない考えに囚われてしまっていた。焦点の合っていなかった視界を機能させ、やんわりと彼らに微笑んだ。

「テイルおばさんのことは、あたし達に任せといて。詳しくは知らないけれど、あたしの連れは手掛かりを持っているみたいだから。ああ~そうだ! おばさんに着替えを持っていくところなのよっ、多分少なくとも明日までは此処に居るから、また後でね!」

 肝心の目的を思い出して、慌てて預かった鍵を取り出し解錠した。子供達は開かれた扉の向こうをチラチラと見回しながら、「またね~」と野原へ消えていった。

「さて~、まずはタラさんの洋服、洋服」

 ゴンドラに駆け込み右上部の寝台を覗く──が。

 いやに派手派手しい色が多いのだけど……タラって女性、随分華やかな衣装がお好みなのね?

 とりあえず一番近い衣服を手に取ったが、えと……コレ、一言で言えば“セクシー”過ぎないか?

「もうちょっと控え目なのはないのかしら……」

 カプセルの中はギュウギュウと言った様子で、沢山の服飾と化粧道具と香水が詰め込まれていた。幾つか広げてはみたものの、どれもあのおばさんに着せられる装いではなくて、更に極めつけは……!!

「ひ、ひやぁ~~~!!」

 す、透け透けのネグリジェって!? こ、これ、おかしいでしょ! こんなの着て、ラヴェルのベッドの上に寝てるって!!

「いや……もういいや。あたしの服を持っていこう……」

 あたしは疲れたようにタラさんの寝台の目隠しを引いた。今夜はあいつに沢山問い(ただ)すことが出来たな、と深く息を吐く。レイさんとの関わりと、攫った化け物の正体、そしてタラさんとは一体何者なのか! い、いえ……もちろん、今後合流する時に備えての情報よ……多分、きっと……絶対!!