ラヴェルの操船技術はもうお見事という域で! まるで地面に吸い寄せられるように滑らかな降下を続けたかと思えば、ラストはふんわりとまるで羽が掌に乗ったような微かな感触だった。

「ど、どうしたらこんなに振動なしで降りられるの?」
「うーん、経験の数かな?」

 そりゃそうでしょうが、明らかに何かコツがあるに違いない。この一ヶ月の間に何度離着陸をこなすのか分からないけれど、必ずその技を盗んでやるぞと心に誓った。

 降り立ったのは開けた野原で、少し先には小川が流れていた。透明なせせらぎの先を見下ろせば、黄金(こがね)色の海が見える──収穫間近の小麦畑。

 うちの周りは野菜畑と果樹園と、残りは牧草地であったので、どちらかと言えば緑濃い海原のような平原が広がっていた。だからこの実り豊かな輝く色は目新しく、(かぐわ)しさすら感じられそうな新鮮な趣があった。

「あ、ねぇちょっと! 何処行くの?」

 そんな景色に見とれている横を、ラヴェルは無言で前へと進んだ。肩にピータンを乗せたまま。

「ユーシィも行く? 面倒なら船に居てもいいよ。少し分けてもらうだけだから、夕食までには戻るけど」

 いやまだお昼前なんですけど。分けてもらうって小麦よね? それを買うのに何故そんなに時間が掛かるのよ。

「あ~待ってよ! あたしも行くっ」

 あたしはきびきびと歩くその後をついて行くことにした。船に独りで居たってつまらないじゃない。