ややあって同じウェイターが琥珀色の液体を入れたグラスと、水の入った小さめのデカンタを運んでくる。テーブルに置かれたそのグラスに、

「水を注いでも宜しいですか?」
「ええ、お願い」

 尋ねられたタラは少々(いぶか)しげに承諾した。どうして厨房で割ってこないのか、ウェイターの手先を見詰めながら、その理由はすぐに判明した。

「ワォ、面白いわネ」
「元々は『アブサン』の代替品として造られた物でございますから。同じように白濁致します」
「なるほど~」

 目の前の琥珀色が水と混ざり合った瞬間、濃いミルクのようなレモンイエローに変化したのだ。

「それではどうぞ、ごゆっくり」

 後からやって来たウェイトレスが、三つに窪んだお洒落な食器に幾つかの魚介料理を並べてくれた。二人は軽く会釈をして、同じ笑顔で静かに去っていった。

 早速グラスを口に近付ける。刹那スターアニスの強烈な香りと、フェンネルらしいハーブの匂いが鼻腔を突いた。どうやらなかなか度数もありそうな雰囲気だ。が、其処は酒豪のタラのこと、特にむせることもなく、その甘い美酒を楽しんだ。