「ぎ、義眼師の家庭に生まれたの?」

 そういうことか。でもそれって偶然が過ぎやしない??

「まぁね。お陰で義眼代はタダだから、随分ラッキーだったかもね」

 かなり前向きな思考で感心するわ。

「うちは代々義眼師の家系なんだ。だから父も義眼師だったし、一応自分もね」

 義眼の義眼師って……あんまり聞かないけどね。

「んじゃ、あんたは義眼師として、こんなにお金を稼いできたの!?」

 義眼師ってそんなに儲かるのだろうか……こんな立派な飛行船を買えて、あれだけの報酬を支払える職業とは思えないのですが。

「まぁ……うちは王家直属の義眼師だから」
「王家? 王家って、何処の? あんたってもしかして外国人なの? うちの母国語堪能だからてっきり──」

 そこまで言い掛けた途端、ラヴェルの瞳が細められ、急ぎ左胸から懐中時計が取り出された。何か誰かと約束でもあるのだろうか?

「ごめん、ユーシィ。話はまた後で。そろそろ時間だ。着陸するよ」
「着陸!?」

 何も聞かされていなかったあたしは、いきなりの声掛けに思わず高い声を上げていた。颯爽と立ち上がりコクピットを目指すラヴェルに続く。着陸操作のお手並み拝見と、慌ててその背を追いかけた──。



      ◆第一章◆キスから始まる大冒険!? ──完──