◆ウェスティの二度目の殺戮が始まり、彼を追いかけながら遺された家族を癒す旅路のラヴェルに、訪れた運命的な(?)出逢い◆



※おそらく殆どの方がお気付きになると思いますが、是非とあるアニメ映画をイメージしてご覧ください(笑)。(二次作品という訳ではありません)
 




 飛行船の辿り着いた荒野の先では、滑らかな赤い岩山の間を、乾いた風が音を立て吹き抜けていた。

「ナラシンハ様!」
「ツパイか……!? おお、少しは成長したようだな」

 ナラシンハと呼ばれた老人は、岩山の片隅から弱々しく手を振った。彼は初めの事件の後にヴェルを出ていった【癒しの民】の一人だ。故にロガール同様、ツパイが依然時を止めていることも知っているようだった。

「十年振りですから。ナラシンハ様とお会い出来たとなれば、故郷の父も喜びます」
「お父上も健在なのだな、それは何より。ところでこちらのお方は……デリテリート家からお生まれになった新王であられるか?」

 ツパイの隣に佇む紫の髪の青年に目を留め、ナラシンハは長い白眉の下から、皺の寄った(まなこ)を見開かせた。

「ラヴェルと申します。残念ながら、王失格の身ではありますが……この度は本当に申し訳ありませんでした。彼の暴挙を、止められませんでした」

 そうしてラヴェルは深く老人に頭を下げた。自分がウェスティを止められていたなら──ナラシンハの孫娘と幼いひ孫は、命を落とさずとも済んだのだ。