「義眼というのは当たり。でもそれは右眼じゃないから」
「ええ?」

 そうして……えっ!? ちょっ……! うわっ!!

「ほらね」

 左眼を(えぐ)り出して、あたしの手を取り、掌に……って、いやぁ~! な、生温かい……!!

「でもおかしいなぁ、初対面の人間に見破られたことはないのだけど」

 掴まれた手首のこちらはフルフルと震えたまま、あたしの余りの驚愕に気付いているのかいないのか、ラヴェルは逆の手を自分の顎に置いて首をひねっていた。んなこといいから、は、早くそれを元に戻してっ!!

 やがて昨夜同様に「夜行性でばかりではない」ピータンが、あたしの掌に舞い降りる。また噛まれるのではないかと更に全身が震えたけれど、『彼女』は意外にも大人しい表情で、まるでラヴェルの義眼を愛おしそうに……抱き締めた!

「なかなか綺麗だと思わない? これ」

 やっとあたしの右手を解放し、ピータンから優しく返された義眼を摘まんで光に(かざ)したラヴェルは、当たり前だけど左の瞼を閉じたまま、ウィンクするように右眼で見詰めた。確かに……瞳の部分は精巧な黒曜石のようだ、けど……何なの? その愛情溢れる眼差しは??

「自分の祖父が作ったものなんだ。祖父は腕の良い義眼師だった」
「え……?」

 あたしがようやく声を発したからなのか、ラヴェルは柔らかそうな布で軽く拭き上げ、手で覆い隠すように義眼を戻し、そして両の眼であたしと相対した。